2018年9月27日木曜日

IVRC2018体験報告

今年もIVRCの予選作品を全部体験する事に成功したので、全作品の感想を。チームへのヒアリングをしたりもしていますが、私の主観で書いてますので、各チームの思いとは乖離している場合があります。ご了承ください。

孤独をFoot Bath

水面に波を作る事で、HMDごしに見える足湯で少女とのインタラクションを楽しめるというものです。横を歩いて行く時に、視界には入ってないものの、確かに人が通った!という感触がありました。人間は無意識に水面を良く捉えているんだなと気が付かされました。ただ、その後少女と水面を揺らしあって遊ぶのですが、その際には水面のCGと実際の波面が一致いるとも感じられず、少し残念でした。横を通り過ぎる時の存在感に絞ったほうが評価が上がったかも知れません。

ブレインツリー

頭に根っこが映えてくる感覚は、頭部マッサージ用の針金で出来たアレを押し込むだけなのですが、CGとあいまって「何かが頭皮を這い回ってきている」感がすごいあります。また水を与えると首回りをチューブで水冷するのですが、確かに湿った土に首をうずめたらこんな感じだろうなぁ。という感じがしました。そういった触覚・温覚・湿度感はよく表現できてるなと感じました。ストーリーとしては頭に生やした木を育てて最後に引っこ抜くという話なのですが・・・体験がの刺激に集中してしまうせいか、ストーリーにはイマイチピンと来なかったです。

天獄渡り

セグウェイに乗って、高い場所を運転していくVRゲームなので、ゲーム内容としては割と普通。工夫している点は膝に振動モータを取り付けて、膝が震える感覚を出していた点。震える事で実は恐いのでは?という錯覚を出したかったとの事だが、「あ、ふるえてる」に留まってしまった。私の筋肉の緊張感が足りなかったのかもしれない。また下を見ると震える設定になっているという事だったので、ゲームクリアに集中して遠くを見ると中々震えを体験できない。というのがちょっと残念だった。長時間の震えを経験したらもしかしたら恐怖を錯覚したのかもしれない。

Be Bait!

自分が釣りエサになって食べられに行くというゲーム。エサになるので当然泳ぐ必要がある。ハンモックを二分割にして人間をつるシステムは乗り降りも楽だし、下半身の振動が上半身に伝搬する事がないので自然に水中浮遊の体験ができた。ただ、泳ぎ方が体を横にゆらせば泳げるというシステムだったので、ゲーム設定である「人間がエサになって海に飛び込む」ではなくて、人間が小魚になって、エサになりに行くという感じだった。見事サメに食べられると、上の黒い板が落ちてきて食べられちゃった感を提示するのだが、全然痛くはないけど、「覆われたぞ!」感はちゃんとある絶妙な重さだったのが印象的だった。

蹴球インパクト


PKをVRで体験できるシステム。足の甲に振動がくる以外は普通にありそうなVR体験になってしまっていた。というのも私が体験したときは「スーパーキック」ができるシステムが故障中だったので、一番の売りが体験できなかった。本当ならば、一旦ゴムチューブで足の動きを引き留め、力をためてから一気に解放されてシュートを決めるというスーパーキックができる予定だったとの事。キャプテン翼の足にぐにょっと変形して貼り付くボールの表現だったとの事だった。何となく想像では楽しそう。本選ではちゃんとスーパーキックを体験したい。

出血体験

冷たいものと熱いものが同時に触ると痛みを感じるという錯覚を利用して傷口の痛みを体感するシステム。狼に腕を引っかかれて出血する体験なのだが、上の錯覚のさいに副次的感じる熱を、血がドクドクと吹き出すときの熱としての表現に上手く再利用していた。コンテンツとしてはボーガンを左手でかまえて、右手で狼をねらってると左手を狼に噛まれてしまうというものだったが、特にその導入はあまりピンとこなかった。左手を固定されているというのとボーガンの相性が余りよくなかったのかもしれない。

鼻腕

自分が象のような鼻がついていて、アゴを動かすと鼻が操作できる。鼻息でモノを掴んだりもできるという体験ができる装置。指示されたタスクを淡々とこなすコンテンツになっていた。割と苦労するのかな?とおもいきや、違和感なく鼻の操作がすぐにできるようになるというのが面白かった。鼻の先に思いものをもつとヘルメットの上のお守りで前方が重くなるようになっていたが、そちらの重みに関しては鼻で操作してるぞ感が少なく、首で頑張ってるぞ感があった。

ピノーズ

こちらも鼻の作品だが、物理的に鼻を引っ張ると共に、鼻のCGが伸びて、自分の鼻が伸びたかのように感じる作品。CGとともに提示されるので、伸びたかなという感じは確かにあった。途中で、ものに鼻があたるとコツンとなったりもする。 なぜか、鼻を左右に揺さぶってびっくりさせる機能がついていたが、これに関してはどう解釈してよいかわからなかった。

無限滑り台

ベルトコンベアの上にソリをおいて無限にすべりおりる感覚を提示しているVR装置。手すりの丸い装置も回転して、手すりをすべっている感じをだしている。また手すり自体がそれぞれ回転することで、カーブを曲がっている状態を提示する事を狙っている。 一番滑り台感をかんじたのはベルトコンベアの継ぎ目を通過するときで、継ぎ目のある滑り台あるよね!って感じだった。しかしこの継ぎ目は狙って作ったものじゃなく偶然の産物であったという事だった。また滑り台は途中で曲がるのだが、このとき手すりが回転する。物理的に考えれば無茶苦茶な挙動だが、これによって自然に体のバランスがくずれお尻がベルトコンベアのずれた位置に行ってしまう。このお尻がずれたことでカーブ感がでていた。私の体感としては手すりはお尻をずらす、きっかけにすぎなかったのだ。狙って作ったのなら凄いが、そうじゃない気もする。ちなみにCGの滑り台カーブは90度カーブだったがさすがにそんなにはカーブした感じはしなくて、お尻は30度ぐらいに感じた。

TeleSight

HMDを被ってる人の動きを仮面がコピーしていて、外にいる人はHMDかぶっている人が「どっち」方向にある「何」をみているのかが解るようになっている。コンテンツはシューティングゲームになっており、防御する際には外の人に人形の目を隠して貰うという、外と内で相互に影響を与えるゲームになっている。「中の人」と「外の人」両方体験して初めて意味がわかる作品。中の人からは外の人がHMDのせいで見えないし、外の人もプロジェクタが不鮮明である事や、所詮はロボットの目線なので追いにくいという事から、お互いの動きが「ある程度解る」というものだった。そのため結局声で指示を出すことになるのだが、目でやろうとしてた時のもどかしさの対比で、声を出してコミュニケーションする事の大事さを実感した作品だった。(本人は多分そっちは意図してない?)

とうめいなおかいもの

こちらも両方を体験しないとわからないシリーズ。足跡だけが見える店舗模型と、その中で買い物タスクをこなすHMDを被った人という作品。透明人間がお店にいますよ。という設定だったのだが、透明人間である必然性は謎だった。とにかく足跡だけみて何しているか想像を巡らせて見ましょうというもので、後でHMD被って体験すると「あ、これしてたのね」という感じだった。後でヒアリングしたところ、ハリーポッターの足跡が見える本にインスパイアされたものだという事だった。ハリーポッターでは足跡をつかってライバルを出し抜いてやろう!だとか、憧れののあの子の足跡だ〜♪的な事前情報があるので足跡だけで楽しめるモノがあったんだと思う。そう考えるとコンテンツにもう一ひねりほしかった。

目からビーム

熱をまぶたに一定時間感じるとビームが出せるようになるので、それで目からビームをだして敵を倒そうというゲーム。残念ながらシステムが上手く動かず部分的な体験になった。目からビームの前にまぶたに力がたまるのを表現するのに外部から赤外線でまぶた付近をあっためているのだが、外からの熱であって内からわき出る力感がなかったのが少し残念だった。とはいえ、顔の熱を狭い範囲感じさせようという熱意はすさまじく、もういっぽ何かできたのかな。という気がした。

めざせドラムマスター

見たまんま、ドラムの音ゲー(ただし、3DCGが空中にういている)であるが、ドラムが上手く叩けた時だけタイコの皮が張っているというものだった。タイミングがうまくあった時だけ気持ちよく叩けるというコンセプトは面白いし、実際に張っている時と張ってない時の違いを感じる事はできたが、今ひとつ太鼓の皮の張りが弱く、そもそも「気持ちよく叩ける!」が体験できなかったのがちょっと残念だった。

ハコニワールド

キューブを触るとCGの中のビルを操作できて振り回す事ができるという作品。ネタとしてはIVRC2008のふしぎデスクの亜種なのだが、CGと現物模型のサイズが合わせ込めてなかったのが少し残念だった。

金縛り布団VR

部屋の中でくつろいでいると、幽霊がやってきて、布団の上に飛び乗ってくるという作品なのだが、映像が非常に映画的に作ってあった。具体的には、ほぼモノクロの世界で幽霊はパッと現れては消え、次ぎにはもっと近い所に現れては、一瞬にしてまた消え。と繰り返して最後にベッドの上に現れる。その時、錘が同時に足の上に落ちてきてビビらせる(幽霊に押さえられた表現)。 途中にカメラブレなどをいれたりして映画的表現を頑張って3Dの中に作っているのだが、HMDで映画的な表現を見ると不思議と、テレビで見るよりも他人感がでて、逆に没入できなくなるんだな。ある意味失敗なんだけれども学びの多い作品だった。

ウォーターストライダー

水面をアメンボになって移動していく体験ができる作品。人間の重さに耐えながら手足を上下に揺動させる(+傾ける)ハードを軽く作るのに涙ぐましい努力をしていた。ただCGの波の振動周期と手足の揺動の周期が合ってなかったため、ゆれているが何故ゆれているかがわかりにくかったのが残念だった。

夢をバクバク

口をあけると空気をブシュッっと打ち込まれ、口の中に何かが入った感じを出す装置。口を閉める必要がないコンテンツ体験だったので、何故わざわざ口の開閉をセンサーで検知する必要があったのか?と疑問は色々あるが、空気の塊が口に入ってきた!という感じはちゃんとあった。また空気の塊をつっこむ時意外も弱く空気を流しておくことで違和感を無くすという事をしていたのは、面白い試みだった。画面中で自分が移動しているので、確かに全体的に違和感がなくなっている気はした。がっつり不透明度100%のオブジェクトが入ってきた!って感じには鳴らなかったので、感覚にCGを合わせるなら不透明度20%ぐらいにおさえたほうが良いのかも?とは感じた。

華麗なる回転

スケートで4回転ジャンプをするCGにあわせて、人力で台座を90度回すことで4回転まわった感じがするという技能系の作品。私が体験したときは、タイミングがずれたせいか1回転したかな?という感じだった。それでも90度にくらべれば4倍なので健闘していた。
ちなみに自力で滑る方向・速度は決められない、追体験専用であった。

ガラスクラッシャー

ガラスを割る感覚を楽しむ作品。CGは間に合わなかったようだが、割る触覚の体験はできた。ガラス・・・ではないが、昔割ったことのある素材の感覚がした。フィルム強化されたガラスあるいは、飴のように、割ったあとに何回かたたいて崩さないといけない感じのもの。ガラスとしては残念だったが思い出せないけれども、なんかある!この割りくずしていく感覚!という作品だった。

異世界(あちら)のお客様から

Vtuberにカウンターでお酒をすべらせて渡す作品。たったそれだけだが、受け取ってくれると嬉しい。ちなみに裏にほんとうにVtuberが控えている。こういったコミュニティ要素のある作品は、短時間のデモでは難しいが果敢によく挑戦したと思う。ぶっちゃけVtuberの反応で価値が大きく変わるので、今後に期待。

リトルウォークメア

超音波で手のひらに触感を発生させて、手のひらの上をコビトが歩く感じを体験させるコンテンツ。ちょっと出力が弱かったのが残念。あとわりと有名なデモも多くあるので、レッドオーシャンで戦う必要があるのが大変そうだった。

回路のお医者さん

ブレッドボードなんだけど、電線のかわりに特殊なチューブで信号をつないで、ロボットを動かすシステム。
デバイスとしては、すごく良く出来ていて、チューブば律動するし、チューブをつかんでる力を検出して、出力を調整するしくみもよくできていた。信号源や、信号を反転する素子があったりして、教育用途を目指しているのかな?という感じも見受けられた。
ただ、それで行うデモが、ロボットの手足を振るだけに見えてしまう所もあった。もっと色々使えそう!!というモヤモヤが残る作品だった。