2017年9月30日土曜日

やっつけ工作でも、これだけは守ろう。その2


前回の続きです、どちらかというメカものの話

接合部の破壊

 以下は、それぞれ両面テープでビニールシートを「人」の形に接着したものと、「二」の形に接着したものを引っ張って剥がしたものです。



いくつか気づきがありますね。「人」より「二」が強い。そう相手がビニールシートの時はそうです。「何故か」を考えるは割と有用です。

人の字を強くするために、両面テープを増やしてみましょう。
意味あるでしょうか?ありません。なぜなら、最初の1mmがはがれて、次の1mmが剥がれるといった風に結局剥離開始点に掛かる応力はどんなに両面テープを増やしても同じだからです。

では、材質が柔らかいビニールでなくて硬い板だったら?
応力は分散するので両面テープを2枚に増やす意味はあります。

剥離を考えるにあたっては「最大応力」が掛かる点で考えるのが大切なのです。

次ぎに「二」の字の接着について、もっと力をかけたいとします。接着面を増やせば接合面の強度は増えるでしょう。しかし「母材(ビニール本体)」側が痛んでしまっていますね。母材強度を超える接着ができている時に、接着で頑張ってもしょうが無いです。母材の強度をあげるか、大きさを大きくして母材にかかる応力を減らしましょう。
「接着強度は母材強度を超えてればそれで十分」それでも壊れる時は全体を見直しましょう。

ビニールの例だと解りやすいですが、木材のように部品の何処が痛んだが原因で、破壊に至ったのかを見抜くのが難しい部品もあります。関係無い所を強化する遠回りは慣れていてもやりがちなミスです。

ホットメルトグルーはプラスチックにくっつかない?

手芸などで便利なホットメルトグルー。フェルトにはよくつきますが、プラスチックにはあまり着かないという認識はみなさん持っているかと思います。この違いは、「材質」の問題ではなく「形状」の問題です。形が入り組んだものにはグルーが噛み込んでしっかり止まるのです。なのでグルーでどうしても止めたい時に、母材表面をヤスリで粗くしたりするのです。

しかし、そんな悠長な事いってられないですよね。プラスチックが固定できるホットメルトグルーはあります。松ヤニ(ロジン)入りホットメルトグルーです。アホみたいにプラスチックにくっつきます。ロボコン畑の人は松ヤニ入りを昔から多用してるようです。
(参考:https://www.monotaro.com/p/1026/5133/)

ネジが緩む

振動がある部分をネジでとめていると緩みますよね。ネジ止め剤をつかって固めちゃいましょう。ナイロンナット等の緩み止め効果があるネジを使うのもよいです。 そんなときはバネ座金(スプリングワッシャー)を入れましょう。(意味ないらしいので取り消し)


回転軸の固定について

モータやポテンショメータ軸と、装置に固定された回転軸の固定。「回転軸を同軸に揃えるのは無理」という事を知らないと苦労します。

同軸で揃えるのは無理なので、軸のブレを吸収する必要があります。モーターの出力をネジ等の棒に伝える場合、がっつり固定するのではなくカップリング(軸継手)と呼ばれる部品を使います。ただカップリングは高いので、小出力なら上の写真のようにビニールホースでもOKです。相手が棒ではなく面である場合は、マジックテープ(面ファスナー)もお勧めです。
また、ロータリエンコーダのように軽いモノは、軸をしっかりとめて、ロータリエンコーダ本体をプラ板のような柔らかいもので固定するという手もあります。

 モータ選定の概算・検算にはワットが便利

「力×速度=仕事率(W)」「力×移動量=仕事(J)」
 アクチュエータの仕様書で「力」や「速度」を目安に選ぶと痛い目を見ます、検算として必ず仕事率(W)を確認しましょう。人間とインタラクションする装置は思いの外高出力になります。 特に足は注意です。VR系の研究で力覚に関する錯覚を研究しているのは、人間の出力がでかすぎて装置で押さえ込むのが現実的ではないという側面もあります。

押すか、引くか。初期検討が大事

多くのメカモノの設計では、材料が座屈しないように「押す」のではなく「引く」設計のほうが軽く少ない材料で作れます。「強度の事はとりあえず後回しにして」とやって試作する事は多いと思うのですが、「押す」設計を「引く」設計に直すのは大がかりになるので、楽して作るために力のかかる主要機構だけは先に時間をかけて考えましょう。

2017年9月21日木曜日

やっつけ工作でもこれだけは守ろう。その1

始めに

IVRCやインタラクティブアート作品など、動く物を展示したい!でも〆切が近い!そんな時のやっつけ工作の時でも、不思議な不具合で悩んで時間を費やす事の無いようにこれだけは守っておいた方が良いというノウハウをまとめてみようと思います。多分シリーズ化して続きます。

ブレッドボードに刺してはいけないモノ

ブレッドボードは信頼性が低いので使わないに越した事はないのですが、どうしても頼ってしまうチームは毎年出ます。
ところでマイコンボードやセンサーボードに付属してくるピンヘッダをそのままブレッドボードに刺していませんか?ピンヘッダや、でかいトランジスタなど足の太い部品を刺したブレッドボードは再利用しないで下さい。そう、1回キリなのです。
大丈夫なものも有るようですが、サンハヤトなどのブレッドボードでは丸ピンヘッダ、や秋月の細ピンヘッダは刺せますが、ピンヘッダには対応できません。
太すぎるピンを刺すと、以下の写真のようにコンタクトが僅かに広がってしまいます。このコンタクトが広がってしまった穴に抵抗等足の細い部品を刺すと、接触不良を起こします。しかも、当初は動いていたのにちょっとしたきっかけで動かなくなるのです。
一般に電気回路においては、スイッチでもコネクタでも、ブレッドボードでも接点は錆びて導通しなくなります(錆びた金属はセラミックになって不導体になる)。ブレッドボードはコンタクトが強く挟み込むことで、錆を削り取って接点を復活させる仕組みになっています。このコンタクトのバネ性が弱くなると、部品を刺した当初は摩擦で錆が削り取られて導通するものの、押さえが甘いために時間と共に錆が復活しやがて導通しなくなります。

ブレッドボード・基板から出る配線は一旦近くに固定

ブレッドボード運用でよくあるのが、気が付かないうちに配線がぬけて動かなくなってしまっているというものです。なのでブレッドボードから出て行く配線は片っ端から固定する必要があります。お勧めの法法はブレッドボードをアクリル板なり木の板に固定して、その板に配線を固定する方法です。
 
配線は引っ張っても動かないようにしっかりと固定します。配線幅程度に間をあけた穴を2つあけて抵抗の足の切れ端などで固定すれば十分な事が多いです(太めの配線はちゃんとインシュロックなどで固定しましょう)。抵抗の足など金属線で固定する場合は、配線側には結び目をつくらず、板の裏側に結び目を持ってくるほうがしっかり固定できます。
ラジペンでしっかりと捻って固定しましょう。

ユニバーサル基板の場合は初めから穴が空いているので基板に直接固定できて便利ですね。基板を起こす時でも配線直結にするときは固定用穴があると便利です。
ちなみに配線をホットメルトグルーで固定する人もいますが、長期的な振動対策としては有効だとは思うのですが、作業中に配線にちょっと引っかけたという場合には大抵無力なので注意しましょう。

配線は曲率半径が命

基板やベースとなる板に配線を固定してもまだ安心できません、人間に取り付けるセンサー等、配線の先が動く場合、下の図のように直角に配線が引っ張られてしまうかも知れません。何度か繰り返せば簡単に断線します。 
例えば、ここで下の図のようにボルトがあったとします。同じ力で繰り返し左右に引っ張ってもボルトがあることで、曲率半径が維持され、断線の可能性が大幅に減ります。
回路を納める筐体を作る時や、ケーブルを保護する保護材を入れる時はこの曲率半径を稼ぐという事を意識してください。



半田付け〜配線が自然にねじ切れる場所〜

上の曲率の話とも絡むのですが、下の図のように半田付けがされた配線があって、繰り返し曲げられると断線する場所はどこでしょうか?
そうですね、半田付けされている所と、半田が流れていない所の境界線で断線しますね。硬い物と柔らかい物が連続しているとき、壊れるのは柔らかくなり始めた境界なのです。半田付けに限らずプラスチック板にビニール袋を固定して振り回しても同様です。
配線を半田付けで延長する事は時々ある事ですが、その際に半田付け部分を絶縁するだけではなく、ビニル被覆部分まで熱収縮チューブやビニールテープをまくのは、急激に配線の堅さが変わるのを防ぐ意味もあるのです。

圧着は専用工具で

半田付けは上のように、配線の堅さが急激に変わる事によって断線がしやすいという問題があります。なので普通はできるだけ圧着を用いるのですが、参加チームの中には圧着をしても「圧着しても引っこ抜けるので半田付けしている」というチームもいます。
折角の圧着の(半田付けに比べれば)断線しにくいという良さを殺しています。

以下の図は圧着の例です。コネクタの羽のような部分を巻き込んでビニル被覆の上から突き刺しています。まず抜けません。サイズの合わない圧着ペンチを使ったりすると、これが突き刺さずに単に左右からパタンと倒しただけの形状になり引っこ抜けてしまいます。
もう一つ、リングに通すタイプの圧着です。真ん中がしっかり圧着されコレも抜けようがありません。良くあるミスは中にいれる銅線の量が少なすぎるor多すぎる場合です。
圧着は素晴らしい接合方法ですが、「正しい工具」と「正しい銅線量」という二つを揃える必要があります。圧着コネクタは大が小を兼ねるという事は難しいので、予め各チームでよく使う配線材の太さを3,4種類決めて、それに対応するコネクタを選定しておくと便利だと思います。
ちなみに、私の工作は上の図の2本の圧着工具で事足りています。

さいごに

ということで、配線周りを中心にまとめてみました。電気系トラブルでは、断線・接触不良が2大原因なので、そこをさっくりやっつけましょう。


追記:圧着について
 絶縁圧着端子のほうが配線の曲率半径 の点でも、不意のショート対策の点でもおすすめです。必要な握力が普通の圧着端子よりも大きいので事前にテストを。
また圧着の良否に関して、自分の腕よりも工具の善し悪しがかなり大きいです。自分の圧着の腕を疑う前に、いろんな人の工具を試しに使わせてもらいましょう。

2017年9月6日水曜日

IVRC予選@JAPAN VR EXPO

IVRCとは

9/14-16の期間JAPAN VR EXPO内でIVRCの予選大会が行われます。(無料)
学生対抗のVRコンテストです。学生対抗といっても、数年後には多くの参加者がVR界を牽引する側にになるガチ勢です。今回の展示は予選なのですが、作品をみれば、やりたい事の本質が何となく想像できるというガチ勢にとっては、作品数が沢山ある予選のほうが見応えあります。VRの未来を見にいきませんか?

 IVRCの先見性

ブランコ(VRanko IVRC2001)
IVRCの参加チームが着眼している点は業界の10年から15年先を見ていると言われています。

例えば商業施設でVRブランコや、VRでトランポリンといったが体験できますが、IVRCではブランコは2001年トランポリンは2007年にやっていました。ほかにも最近Windows Mixed Reality等、「Mixed Reality」をバズらせようという話もありますが、これぞMixed Reality」という見えないコビトと触れ合う作品は2004年 さらに推し進めた(?)ロボットとVRの融合は2006年にでています。

ということで会社の金で見に行くときは。
「大型VR装置をの見学体験 (エンパワースタジオ)。最新の現行VR業界の動向調査(VR EXPO)。将来期待されるVR応用の方向性の調査(IVRC)」とでも言っとけばOKでしょう。

今年の作品は?

こちらを参照http://ivrc.net/2017/projects/。Webにのっている作品説明文は全部目を通してから行った方が良いです。

 JAPAN VR EXPOについて

 VR EXPOについてはナカノヒトではないので、細かい事は解らないですが出展一覧をみれば豪華差はつたわるかと思います。出展1出展2特にエンパワースタジオでしか見る事ができない巨大VR装置は必見だと思います。稀にしか見れないですからね。
 

 会場について

オフィシャルにはつくば駅からのバスが案内されています(無料シャトルバス有り)。そのほかに高速バスもあります。間違って筑波大学病院のほうに行かないように注意です。
会場は大学本館とはかえで通りを挟んだところにありますgoogle Mapsで「エンパワースタジオ」で検索するとでてきます。

食事について

エンパワースタジオから近い食堂は「3A棟(注:土曜やってない)」と「2B棟(全日やってる)」です。お昼(14時ごろ)までの営業とのことです。詳しい営業時間は食堂のお知らせをご覧下さい。 朝飯・夕飯は学内では無理と思ったがよいでしょう。あと会場内飲食禁止です。